3/17 シャングリ・ラ [本]
SFはほとんど読まないのだが、面白いという評判なので、「シャングリ・ラ」を読んだ。ハードカバーで上下段600ページと、かなりの大作である。地球温暖化の進行により、世界経済は炭素本位社会に移行しており、東京も人々は気温が低い空中のコロニーである「アトラス」に移住しはじめ、地上では、二酸化炭素を吸収させるための政府の施策として急速な森林化が行われているという設定。「アトラス」に住むには、一定のアトラスランクを取得していなければならず、それが取得できない貧民層は、森林に浸食される地上のスラム街に住むしかない。そのような設定の中で、貧富格差に伴う闘争、炭素本位社会における金儲け、政府部内における権力闘争などを描写している。いくつかの場所で同時進行で話が進んでいき、物語が進んでいくにしたがい、それらの連関が明らかになっていくというスタイルで、展開もコロコロと変わるので、読むスピードがどうしても抑えられてしまい、読了するのに1週間かかってしまった。SFとは言いつつも、現在社会の問題点をかなり意識して書かれており、そのあたりの著者の視点は斬新で面白いのだが、現実主義者としては、SF固有の現実ではあり得ない描写の中にはついていけない部分もあった。全体としては、まあ面白いの部類か。人の好みによって評価の分かれる小説だと思う。
コメント 0