6/27 棄霊島 [本]
内田康夫の「棄霊島」という旅情ミステリーを読んだ。浅見光彦100事件目の節目の作品とのことである。かつて炭坑の島として栄えていたものの、今は炭坑の閉鎖とともに廃墟となっている長崎の軍艦島を舞台にしたストーリーである。僕もかつて軍艦島の写真を何かの雑誌で見た際に、その異様な光景に圧倒された覚えがあるが、一度は日本の中でも最先端をいっていただろう街がゴーストタウン化して朽ち果ててしまっている現状は、何とも言えないはかなさを感じる。その軍艦島にスポットを当てているのは、なかなか斬新な着眼である。しかし、ストーリー自体は、今回はわりと最初の方から犯人らしき人物が分かってしまうので、どちらかというと経済成長の間の日本の闇の部分の記述や長崎を中心とした各地の旅情の記述が中心となっており、どうも上下巻にしてしまうと中だるみしてしまっている感は否めない。
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