11/7 ザ・リコール [本]
ダイヤモンド社の経済小説大賞はいつも注目しているが、今年の受賞作である「ザ・リコール」を読んだ。読み始めてすぐに、三菱自動車のリコール隠し事件をベースにしていることが分かる。車の構造上の欠陥が生じている蓋然性が高いにもかかわらず社会的評価の失墜と多大なコスト発生をためらってリコールを避けようとする自動車会社、自動車会社と共謀して保険料の支払いを抑えようとする損保会社、これらの不正を告発しようとする損保会社の社員の攻防を描いている。さらに、自動車会社、損保会社それぞれが大企業であり、この問題を奇貨として、社内における自らの影響力の拡大を狙うグループが暗躍するが、いかにもモラルの下がった組織にありそうな話で、描写になかなかのリアリティがある。きっと著者自身の損保会社における勤務経験が活きているのだろう。「コンプライアンス」という言葉が一般化して久しいが、この言葉がいったい何を意味し、組織の一員としてどのように行動すべきかということを正面から考えさせられる一冊。
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