12/1 魔性 [本]
デビュー以来、面白い作品を連発してきた渡辺容子だが、5年ぶりの新刊本とのことで、期待して読んだ。結論から言うと、ちょっとがっかり。引きこもり症になり、自堕落な生活を送っている29歳独身女性の主人公が、唯一の生き甲斐であるサッカーのサポーター活動を通じ、知り合った女子高生の友達が何者かに殺されてしまったので、その真犯人を見つけようとするストーリー。謎解きを主体にしているというよりは、その過程において主人公が自堕落な生活から抜け出て前向きに生きようとする心の変化、そして、一見幸せそうな人生を送っているように見える周りの善人たちも色々な裏の顔を持っており、誰もが表の顔と裏の顔の間の葛藤を多かれ少なかれ持ちながら苦労して生きていることなど、人間そのものを描写しようとしている。まあ、ソコソコには面白いのだが、どうも展開に強引なところがあったり、間延びしているところがあったりと、いつもの渡辺容子小説のメリハリと描写のキレが欠けている感じ。期待値が高過ぎたためにこのような感想を持っているのかもしれない。
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