SSブログ

11/1 ナイト・フォール [本]

日経の書評欄に好意的なコメントが掲載されており、かつ、翻訳者がジョン・グリシャムの作品を独占的に?訳している白石さんだったので、期待して読んでみたのだが、いまいちだった。1996年に実際に起きたTWA800便の爆発事故を題材に、爆発事故はアメリカの調査団が結論づけたような機体内部の燃料タンクにおいて気化したジェット燃料が原因であるというのは誤りで、何者かにミサイル狙撃されたという目撃者や証拠が出てくるにもかかわらず、そのことをFBIがなぜか隠そうとしているというノンフィクションっぽいフィクション作品である。ストーリーの着眼点はよいと思うのだが、どうも展開がまどろっこしく、下品な表現も多いのが気にくわない。最後のオチの付け方はもっと工夫の余地があると思うのだが、お粗末で消化不良を起こしてしまった。

ナイトフォール(上)

ナイトフォール(上)

  • 作者: N. デミル
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/09/16
  • メディア: 文庫


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

10/31 不利益分配社会 [本]

高瀬さんという政治学者が書いた「不利益分配社会」という新書を読んだ。今後の経済の低成長、巨額の財政赤字、人口減少が進む中で、政治の役割というのは、利益分配から不利益分配へ変わっていくということを前提に、政治のあり方を論じている。特にこの政治に関する潮流の変化を敏感に感じ取って田中角栄に源を発する金権政治と決別し、大きく不利益分配の方向へ舵を切った小泉前首相の政治手法の評価にページを割いており、良くも悪くもこれからのリーダーは、小泉さんを基準に自分自身のリーダーシップの取り方を考えざるを得ないし、その他の人たちもリーダーを小泉さんと比較して評価していくだろうと予測している。その上で重要なのがマスメディアとの関係で、「見せる政治」を大前提として、さらに「魅せる政治」が必要だとしている。政治を舞台に喩えて、きちんとリーダーの役割を演じきれる人間でないとこれからの首相は務まらないとしている。最後に、一般国民も政治という劇を見る能力を鍛えなければならないと論じているが、個人的にはこの最後の部分が一番大事だと思う。総論として言うは易しだが、実際、どのように鍛えていくのか、もう少し具体論がほしかった。まあ、ページ数の問題もあるだろうから、次作に期待したい。

「不利益分配」社会―個人と政治の新しい関係

「不利益分配」社会―個人と政治の新しい関係

  • 作者: 高瀬 淳一
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2006/08
  • メディア: 新書


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

10/29 仕事も人生も4つのボールでうまくいく [本]

ある出版社の人にいただいた、東京スター銀行の頭取であるバッジさんが書いた「仕事も人生も4つのボールでうまくいく」というワークライフバランスをテーマにした本を読んだ。バッジさんという人物、この本を読んで初めて知ったのだが、敬虔なクリスチャンで、大学時代に2年間も日本を布教活動で回った経験もある日本通で、日本語も流暢に話すことができるらしい。東京スター銀行の公用語が日本語というのにはびっくりした。バッジさんは、この本の中で「自分」「人間関係(家族・友人)」「社会(ボランティア)」「仕事」という「4つのボール」が自分の人生において同じように大事であり、バランスをとってすべてを頑張ることでお互いにシナジー効果が出てくるということを前提に、どうやって限られた時間の中でうまくバランスをとってやっているのかということを述べている。まずはそれぞれのボールについて短期、中期、長期の目標を設定し、目標管理をすることが始まりだという。アメリカ人らしい合理的な考え方だと思うが、その目標管理のために、スケジュール帳を4色に色分けして、自分の時間の使い方を1週間ごとに管理するとともに、1日の時間の使い方についても毎朝1人の時間を1時間必ず作って精査しているらしい。そこまでやるかというくらいに段取りの設定と確認に時間をかけているのが印象的だが、まずは自分の時間の使い方のイメージを作った上で柔軟にやりくりするというやり方は、なし崩し的に仕事に時間を注いでしまう日本人の時間の使い方に一石を投じるものなのではないか。簡単に読める本であり、時間の使い方やワークライフバランスの取り方に悩んでいる人にはお薦めである。

仕事も人生も4つのボールでうまくいく

仕事も人生も4つのボールでうまくいく

  • 作者: タッド・バッジ
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2006/09/01
  • メディア: 単行本


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

10/25 真夏の島に咲く花は [本]

垣根涼介の新作「真夏の島に咲く花は」を読んだ。今回は南太平洋の島国フィジーを舞台にした小説で、フィジーにおけるフィジー人とインド人の複雑な人種問題を背景に、フィジー人、日本人、中国人、インド人という異なる人種を主要登場人物として登場させ、本の帯に書いているように、自由と幸せというのはいったい何なのかということを読者に考えさせようとしている。特にフィジー人というのは、日本人的価値観からすれば怠惰な人種として描写されているのだが、その反面、ものすごく自由に生きており、また、人間関係を大事にする人種である。お金を持たないといけないという強迫観念に駆られて、あくせくと生活し、仕事し、人間関係が希薄化している日本人とはある意味対極的な生き方をしていると言える。垣根涼介の本ということで、「ワイルドソウル」「ヒートアイランド」的な展開を想定していたので、男女の青春を描く穏やかなトーンの展開にびっくりしてしまったが、これはこれでよい味が出ていると思う。

真夏の島に咲く花は

真夏の島に咲く花は

  • 作者: 垣根 涼介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/10/13
  • メディア: 単行本


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

10/23 行動経済学 [本]

なかなかのロングセラーとなっているらしいのだが、「行動経済学」という新書を読んだ。標準的な経済学の世界というのは、すべての情報を入手でき、それに基づいて合理的な判断・行動を取る人間を前提として組み立てられているいわばフィクションの世界であり、経済学者たちはそのような純粋状態をモデルとして経済の仕組みを分析することに意義を見出しているわけだが、一方で、「そのような前提はまったく現実的でない」といった批判も根強くある。行動経済学は、そのような批判に応え、むしろ個々の人間が合理的な判断・行動を取らないということを前提に、どうして合理的な判断・行動を取らないのかを分析し、経済の仕組みを理解しようとするアプローチである。本書は、その入門書と言ってよい存在で、人間の先入観、錯覚、リスク性向などに始まり、精神学的な脳の構造と働きに至るまで幅広い行動経済学上の理論をカバーし、分かりやすく解説してくれている。この本を単独で読んでもそれなりに面白いと思うが、標準的な経済理論を一通り勉強した人が読むと、対比が明確になり、経済に対する理解(困惑?)がより深まること間違いなしである。

行動経済学 経済は「感情」で動いている

行動経済学 経済は「感情」で動いている

  • 作者: 友野 典男
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/05/17
  • メディア: 新書


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

10/20 駐在刑事 [本]

笹本稜平の「駐在刑事」という本を読んだ。警察ものの短編集であるが、笹本稜平標準からすると物足りない印象。元来、長編を書く作家が無理に短編を書いたからなのか、冒険小説を得意とするにも関わらず、警察小説に手を出してしまったからなのかはよく分からないが、どうも短編それぞれが決められたページ数を意識しすぎて、展開がギスギスしてしまっている感じ。そうすると、読み手としても残っているページ数を意識してしまい、小説に集中する以前に、どうやってフィナーレに向けてまとめていくのかという方を考えてしまう。悪循環である。次作は、また本来のスケールの大きい長編の冒険小説に戻ってほしいもの。

駐在刑事

駐在刑事

  • 作者: 笹本 稜平
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/07/28
  • メディア: 単行本


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

10/13 若者はなぜ3年で辞めるのか? [本]

同い年の著者が書いている本ということで手に取った新書。かなり売れているらしい。かつての日本の高度経済成長を支えた年功序列と昭和的価値観を、今や時代にそぐわないものとして小気味よく批判している。作品中の

「企業内に年功序列というレールを敷き、安定性と引き換えに、労働者に世界一過酷な労働を強いている。そのレールから降りることを許さず、一度レールから外れた人間はなかなか引き上げようとしない。・・・小学校から始まるレールのなかで、試験によってのみ選抜されるうち、人はレールの上を走ることだけを刷り込まれ、いつしか自分の足で歩くことを忘れ果てる。最後は果物のように選別され、ランクごとに企業という列車に乗り込み、あとは定年まで走り続ける。」

という表現は、ツボを突いたよい比喩だと思う。その他感覚的に共感する部分は多いのだが、主張を裏付けるデータがほとんどないこと、そして批判に終始し、何らかの対応策の提示がないのが残念。強いて言えば、自分が属しているシステムを信用しすぎず、裏切られても強く生きていける自己を築いていくことが対応策なのかもしれないが、ちょっと悲観論に傾きすぎているような気もする。

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来

  • 作者: 城 繁幸
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/09/15
  • メディア: 新書

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:

10/12 燃える会議術 [本]

題名に惹かれて買ってしまったが、個人的には新たに得るものはなかった印象。会議の冒頭に会議の目標を明確にして参加者全員が共有すること、フリーライダーがいないようにすること、議論を整理するファシリテーターを置くことなど、これまで様々な会議本で指摘されてきたことをなぞっている感じ。もちろん、一般に成功者と言われる人たちの意見がオムニバスでまとめてあり、それらの人たちが会議に当たって気をつけていることを簡潔に理解することができるので、最初にこの手の本を読む人にとってはお薦めかもしれない。ただ、理解と実践は別。どうやったら無駄な会議、非効率な会議を実際に減らせるのだろうか。リーダーの意識改革がすべてと言ってしまえばそれまでだが、下っぱの立場でできることは、彼らの意識改革を促す努力だけなのだろうか。そのあたりの指南本的なものがあると嬉しい。

燃える!会議術 早く終わって、結果が出る

燃える!会議術 早く終わって、結果が出る

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2006/09/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

10/11 闇の底 [本]

江戸川乱歩賞を受賞した「天使のナイフ」を書いた薬丸岳の第二作「闇の底」を読んだ。何らかの賞を受賞した後の作品は質が落ちるというのがありがちなパターンで、あえて期待値を下げて読み始めたのだが、今回はよい方に裏切られた。「天使のナイフ」は少年犯罪をテーマにしていたが、今回の「闇の底」は少女を犠牲者とした性犯罪をテーマに選んでいる。犯人を追う側と犯人側の両方の行動と心理を描写するパターンは、最近の推理小説でもボチボチ見られるようになったが、この作品も冒頭から両者を交互に描写している。そして、犯人を「男」と匿名で表記し、いったいこの「男」が誰なのかということを読者に考えさせる。読み出したら止まらない。途中で作者が意図的に作ったと思われる罠もある。読了後に帯にある「絶対に捕まらない-。運命が導いた、哀しすぎる「完全犯罪」。」という文言が初めて理解できた。東野圭吾とどことなくタッチが似ており、彼の推理小説が好きな人にはお薦めである。

闇の底

闇の底

  • 作者: 薬丸 岳
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/09/08
  • メディア: 単行本


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

10/5 組織行動の「まずい!!」学 [本]

留学先の大先輩が書いた「組織行動の「まずい!!」学」という本を偶然見つけ、さっそく読んでみた。大先輩の著作だからという理由で言うわけではないが、なかなかの本である。組織の危機管理をテーマに、なぜ危機を招いてしまうのかということを、様々な事例を引き合いに出しながら組織行動的観点から分析している。最初の方でハッとさせられるのが、よく言われている「団塊の世代が大量引退するから現場力が失われて事故が増える」という論理は間違っているということ。著者によれば、むしろ重大な事故を引き起こすのは己の力を過信し、周囲の助言も聞き入れず、定められた手順を逸脱したベテランであるという。未熟な人間は自分が未熟であることを知っているから緊張し、分からないことがあればマニュアルを確かめたり、先輩に聞いたりするのでかえって事故を引き起こす確率が低くなるらしい。重要なのは、そのような人間を発生させてしまう組織全体における危機意識の不在、行きすぎた効率化、緊急時対応能力の欠如などであるとし、平時においてはなかなか日が当たらず、ともすればすぐにコストカットの対象となってしまう組織における危機管理に警鐘を鳴らしている。大変読みやすく、マネジメント層から現場まで幅広い人たちに読んでもらいたい一冊。

組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか

組織行動の「まずい!!」学―どうして失敗が繰り返されるのか

  • 作者: 樋口 晴彦
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 新書


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。